特集
次世代に引き継がれる木と技と心。古民家再生で林野庁長官賞受賞!
「大工と組むわが家再生」でWOOD DESIGN賞2016 優秀賞(林野庁長官賞)を受賞した新和建設(本社・北名古屋市)。これまでも「1.5世帯で住むスタイル」、「大工育成ビジネスモデル伝承ビジネスメソッド」で2年連続GOOD DESIGN賞を受賞するなど、家づくりだけにとどまらず、次世代に向けた取り組みに対しても評価が高い。匠の家づくりをモットーに躍進する藤井保明社長にお話を伺った。(聞き手 中日新聞社常務取締役編集担当 河津市三)
優れた技術と木材で古民家を再生 ウッドデザイン賞受賞の取り組み
河津
ウッドデザイン賞の受賞、おめでとうございます。まずは受賞に至るまでの歩みや、家づくりに対する思いをお話いただけますか。
藤井
ありがとうございます。当社は昭和44年創業以来、注文住宅一筋に東海地方で4500棟余りを施工させていただきました。先代の社長が元大工で、私は兄弟弟子でした。50年以上、家づくりに携わってきた中で大切にしている思いは「家づくりは、全て人が為すこと」。住み始めてからも日々、お客さまに感動してもらえる家をこれからも建てていきたい。新和建設は家づくりのプロ集団でありたいと思っています。
河津
今回受賞された「大工と組むわが家再生」は受賞総数251点の中から優秀賞(林野庁長官賞)9点に選ばれました。評価を得たポイントをお聞かせください。
藤井
まずは優れた技術力を持つ大工と、地域の優良な木材を持つこと。その上でシステム化された工程・品質管理により、均一化した品質で計画的に木造民家を再生できるビジネスモデルを構築したことが評価されました。木造民家の多い地域における空き家問題を防ぐ仕組みとしても注目されています。
河津
家の再生というのは、手間もかかりそうですね。
藤井
そうですね。手間も費用も新築とそれほど変わりません。しかし「わが家」を再生することで太い柱や梁は孫子の代へ引き継がれ、使える木材は有効に活用できます。古い家がよみがえれば、若い世代が住み着き、空き家減少にもつながるというわけです。
河津
具体的にどのような工程で再生は進むのですか。
藤井
「わが家再生」は困りごとの解消から始まります。まずは耐震。住友ゴム工業と当社の共同企画商品である制震ダンパー「WAGAYA」により耐震性を高めます。この制振装置は繰り返す地震にも効果を発揮し、今ある柱に取り付けできる点もポイントです。また、しっかりと断熱改修も行いますので、冬場寒々しいイメージの古民家でも快適に過ごしていただけます。こうした古民家再生は職人の技術力がないと難しいのですが、当社ではしっかりと育成を行っているため、様々な環境に対応して「わが家」を再生できるようになりました。

■2016年度も、2つのデザイン賞を2年連続でW受賞。さらに、「大工と組むわが家再生」が「ウッドデザイン賞2016」優秀賞 林野庁長官賞を受賞しました。

■ウッドデザイン賞受賞「大工と組むわが家再生」
技術を伝える大工育成に注力 新たな発想による暮らしの提案も
河津
技術力を持った人材育成がしっかりと基礎を築いているのですね。
藤井
家を守る匠の技を次世代に伝えることは、とても大切なことです。アフターメンテナンスを含め、家に係るすべてのことに応え続けるためにも、技術を伝える人材は欠かせません。そのために独自の大工育成システムを採用したのが、グッドデザイン賞もいただいた「大工育成ビジネスモデル伝承ビジネスメソッド」です。これにより現場の大工棟梁だけでなく、関係する協力業者全員が高い品質基準と管理体制を徹底することが可能となりました。
河津
どのようなシステムですか。
藤井
高校卒業後、6年間は各親方のもとで研修を行います。この6年間は社員として会社に所属しながら、道具の使い方や技術を習得します。7年目の1年間は研修を受けた親方にお礼奉公を、そして8年目で一人前の棟梁となるわけですが、独立後は専属を義務付けていないのも特徴です。
河津
安心して任せられる素晴らしい取り組みだと思います。新和建設では家づくりだけでなく、暮らし方にもしっかり配慮されていますね。
藤井
家族の移り変わりにも無駄なく対応できる新しい空間の考え方として「1.5世帯という新スタイルが誕生しました。和室を使い分けができる「シェアルーム」と位置付け、家族が集う住まい中央の床座の部屋と合わせることで変化するライフステージに対応します。住まう方の動線により、生活の豊かさにも繋がるアイデアと評価をいただいています。

■中日新聞社常務取締役 河津市三

■ウッドデザイン賞
グッドデザイン賞W受賞「1.5世帯で住むスタイル」
地元の材木を使い、森を守りたいという思い
孫子の代まで受け継げる家づくりを
河津
現業部門の社員は何人ですか。
藤井
現在、175人にパートの方が85人程度、そして大工が100人を超えます。今年はさらに大工研修生を6人採用する予定です。
河津
御社では地元の東濃桧を使用した家づくりにこだわられていますね。
藤井
東濃桧にこだわる理由は、地域の気候風土に適した住まいづくりにはその地域で育った素材を使うことが大切だという考えからです。また地元の林業、森、そして豊かな自然を次世代に伝えたいという思いがあります。東濃桧は年輪が緻密で、素晴らしい木目と光沢があります。耐久性にも優れており、狂いが少ないことも長所です。桧というと高級なイメージかもしれませんが、東濃桧を使うことで良いものを永く使い続け、ひいては森林と林業を守ることにもつなげて行きたいと考えています。
河津
今後はどのような展望をお持ちですか。
藤井
今後も木を使用した家づくりを支える大工とともに、孫子の代まで健康的に暮らせる木の家にこだわり続けます。それは100年の月日を経てもご家族の歴史を刻み、木のぬくもりと肌触りを五感で感じられる住まいです。東濃桧と職人の技、そして真心。この財産を守りながら地元の皆さまとの繋がりを大事に、地域に合った家づくりを考えていきたい。おかげさまで昨年は紹介から着工に繋がったお客さまが4割を超えました。紹介は会社のことを信頼して、満足していただけた証拠ですから。こうした縁も大切にしながら、今後もお客さまに喜んでいただける家づくりを続けて参ります。
河津
本日はありがとうございました。
■フ中日新聞社
常務取締役 河津 市三
■株式会社新和建設
代表取締役社長 藤井 保明氏
岐阜県白川町出身。昭和38年、中学を卒業し大工見習として名古屋の親方のもとで働き始める。30歳で新和建設美濃加茂支店を設立。50年以上、家づくりに携わる。